2024/10/1
こんにちは、Wataruです。
なぜファシア(筋膜)が運動とフィットネスに重要なのか?
運動とフィットネスの世界では、効率を高め、ケガを防ぎ、回復を促進するための方法を常に模索しています。アスリートでも高齢者でもちょっとした怪我から不調が始まり、やがて大きな痛みとなり日々の生活にまで影響するようなものになっていく可能性があります。だからこそ、怪我の予防と回復促進が非常に重要です。
これを達成する上で重要な役割を果たす構造が一つあります。それが「ファシア」です。
著名なファシア研究者であるカーラ・ステッコ博士は「ファシアは単なる受動的な構造ではなく、運動や力の伝達において重要な役割を果たしている」と述べています(Stecco,2015)。
しかし、多くのフィットネス専門家は、その真の可能性を十分に理解しているとは言い難いかもしれません。
ファシアを理解することは、ただの流行ではなく、人間の運動アプローチにおけるパラダイムシフトだと思うのです。この知識 = ファシアは、トレーナーやセラピストとしてのアプローチを大きく変える可能性を秘めています。
今回は、ファシアの運動とフィットネスにおける役割を探り、どのようにその力を活用してパフォーマンスを向上させ、回復を促進し、ケガを予防することができるかを説明します。
この基本的な知識は、
ファシアに特化した教育プログラム
「Merrithew Fascial Movement コース」への入り口です。
1. ファシアとは?
膜・筋膜(以下:ファシア)は、筋肉、骨、臓器を包み、体全体に広がる結合組織のネットワークです。Fascia Research Societyによると「ファシアは筋肉、骨、臓器を包む結合組織であり、運動や安定性において重要な役割を果たしている」とされています。(Fascia Research Society, 2018)
ファシアは主に3つのタイプに分けられます。表層ファシア、深層ファシア、そして内臓ファシアです。表層ファシアは皮膚のすぐ下にあり、深層ファシアは筋肉や骨を包み、内臓ファシアは内臓を支えています。
長い間、ファシアは単なる構造的な役割しか持たないと考えられていましたが、最近の研究により、それがはるかに重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
ファシアは、いまや主要な感覚器官として認識されています。
ファシアには筋肉組織の6倍以上の感覚神経終末が存在するとされており(Schleip et al.,2012)、これにより、ファシアは固有感覚に大きな役割を果たしています。
健康なファシアは、滑らかで協調的な動きを支え、ファシアの機能障害があると、硬直や痛み、可動域の減少を引き起こします。
2. 筋ファシア系:ファシアが運動に与える役割
運動において、私たちは通常筋肉に注目しますが、筋肉は単独で動くわけではありません。ファシアと一緒に働くことで、筋肉は協調的な運動を生み出します。
筋肉とファシアの連携システムは「マイオファシア系」(以下:筋膜)として知られています。トーマス・マイヤーズによると、このシステムは「筋肉とファシアが一体となって調和した運動を生み出すもの」と定義されています。(Myers,2009)
筋膜は、体全体に力を伝達する上で重要な役割を果たします。筋肉が収縮するとき、それは単に筋線維だけが働いているのではなく、周囲のファシアがその力を体全体に伝達します。
この力の伝達の概念は、ウィルケら(2016年)の研究により支持されており、ファシアの連続性が運動連鎖において重要な役割を果たしていることが示されています。
運動指導者にとって、これは大きな変化をもたらします。個々の筋肉に焦点を当てる代わりに、筋膜ネットワークに対処することで、より全体的なアプローチで運動や可動性を向上させることができます。またファシアは、柔軟性を向上させるだけでなく、協調性や運動効率をも全体的に向上させます。
3. ファシアのネットワーク:筋肉を超えた連続性
筋膜は、個々の筋肉を包むだけでなく、それらをつなぎます。この概念は「ファシアの連続性」として知られ、ファシアの層が体全体に力を伝達し、筋肉、骨、関節の間で相互作用を持つことを示唆しています。言い換えれば、一部の体の運動が他の遠隔部位に影響を与えることができます。
例えば、ふくらはぎの筋膜の制限が、腰の動きに影響を与えることがあります。FindleyとShalwala(2013年)による研究では、ファシアの層が体全体に力を伝達し、遠くの筋肉や関節に影響を与えることが確認されています。これにより、局所的なファシアの問題が、運動全体に影響を与える可能性があることが分かります。
運動指導者にとって、このことは重要な意味を持ちます。筋膜の制限に対処することで、全体的な運動効率を向上させ、ケガのリスクを軽減することができます。
ファシアに焦点を当てることで、単なる症状を治療するのではなく、運動機能障害の根本原因に取り組むことができます。
4. ファシアの健康が回復とパフォーマンスに与える影響
ファシアの健康は、回復と最適なパフォーマンスにおいて非常に重要です。健康なファシアは、潤滑され、柔軟で、適応性に優れていますが、不健康なファシアは、硬直し、脱水状態になり、動きが制限され、ケガのリスクが高まります。幸いにも、ファシアの健康を維持・改善する方法はいくつかあります。
ランジェバン(2018年)の研究では、ファシアが手技療法に反応することが示されています。フォームローリングや動的ストレッチなどの技術は、ファシアの硬直を軽減し、潤滑性を改善し、柔軟性とパフォーマンスを向上させます。またファシアの癒着を解放することで、炎症を軽減し、激しい運動後の回復を早めることができます。
運動指導者にとって、この実用的なアプローチは非常に価値があります。クライアントのルーチンに筋ファシアリリース技術を組み込むことで、柔軟性を保ち、ケガのリスクを減らし、トレーニング後の回復を促進することができます。
5. 運動トレーニングにおける実用的な応用:運動指導者が知っておくべきこと
ファシアを理解することで、運動専門家にとって多くの可能性が開かれます。
以下は、ファシアに焦点を当てた技術をトレーニングに取り入れる方法です。
1. 筋膜リリース
フォームローリングや手技療法などの技術は、ファシアの緊張を解放し、可動域を回復し、硬直を軽減します。
2. 動的および静的ストレッチ
筋肉だけでなく、ファシアに焦点を当てたストレッチは、柔軟性を向上させ、ケガを予防します。”Journal of Bodywork and Movement Therapies”(2019年)の研究では、ターゲットを絞ったファシアストレッチにより、可動域が30%向上したことが示されています。
3.ファシアの性質に基づいた動作シーケンス
“Fascial Movement(Merrithew)”に基づく動作シーケンスは、全体的な運動効率と協調性を向上させます。
6. Fascial Movement Course:ファシアの科学と応用を深く学ぶ
ここまででわかるように、ファシアは運動の重要な要素です。ファシアを理解することは、体の動き、回復、適応の仕組みを理解するための「欠けていたピース」です。
だからこそ、この知識を深め専門的に学びたい方に向けて「Fascial Movement Course」があります。
このコースでは、ファシアの解剖学、生理学、および実践的な応用法を詳しく学ぶことができます。科学的根拠を尊重しつつも、それに支配されることなく独自の解釈と体系立てられた概念に沿って展開するムーブメントの実践による実践的学習体験を提供します。
ケーススタディからのプログラム立案などを含め、このコースを通じて、クライアントのファシアの健康を評価し、向上させるための実用的なツールを得ることができます。
結論:ファシア—運動における隠れた可能性を解き放つ鍵
今こそ、ファシアに目を向ける時です。ファシアは、運動とフィットネスの世界において、大きな変化をもたらす存在です。
ファシアを理解し、適切に取り扱うことで、運動効率を向上させ、ケガのリスクを減らし、回復を促進することができます。従来の筋肉に焦点を当てたアプローチだけでは得られない効果が期待できます。
「Fascial Movement コース」でファシアの秘密を発見し、クライアントの運動パフォーマンス、その回復過程をこの知識で革新できます。
コースはこちら:Fascial Movement コース:膜・筋膜ムーブメントコース 2025年2月開催
【参考文献】
- Fascia Research Society (2018). "What is Fascia?"
- Myers, T. (2009). Anatomy Trains: Myofascial Meridians for Manual and Movement Therapists.
- Schleip, R. et al. (2012). "Fascial Plasticity – A New Neurobiological Explanation." Journal of Bodywork and Movement Therapies.
- Stecco, C. (2015). "Fascial Manipulation: Practical Applications of the Myofascial System".
- Findley, T., & Shalwala, M. (2013). "Fascial System Research: A New Paradigm of Understanding Human Structure." Journal of Bodywork and Movement Therapies.
- Langevin, H.M. (2018). "Fascia Mobility, Implications for Health and Disease." Journal of Anatomy.
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