なぜ“近くに似たようなスタジオ”が増えるのか?
- yukokato
- 7月31日
- 読了時間: 4分
―― アイスクリーム屋が教えてくれたこと ――
2025/8/1

「このあたり、また新しいピラティススタジオができたんですね…」
最近、クライアントや卒業生からこんな声をよく聞きます。以前は珍しかったウェルネス系の個人ビジネスも、今やどの街角にもあるような時代。
休暇で訪れたとある国のバザールでも同じ体験をしました。似通った商品を隣同士で売っていて、どこも同じに見えてきて、最後はぐるぐる道に迷ってしまいました。
「なぜ、わざわざ近くで始めるのか?」
「競合があるのに、どうして?」
そんな疑問に、100年前の“アイスクリーム屋さん”がヒントをくれました。
---
ビーチに2つのアイスクリーム屋
ある日、長いビーチに2人のアイスクリーム屋さんが店を出しました。
最初は、お互い距離を取りながら左右の端に店を構えていました。どちらも自分のエリアの客をまんべんなく獲得して、うまくいっていたのです。
でもある日、こう思いました。
「ちょっと真ん中に寄れば、あっちのお客さんも取れるんじゃない?」
そしてもう一人も同じように考えます。
「相手が中央に寄るなら、こちらも近づかないと!」
そんな風に、お互いが少しずつ中央へ、中央へ……。
気づけば2人は、ビーチの真ん中で肩を並べて競い合っていました。
---
ピラティススタジオでも、似たようなことが起きています。
これは経済学でいう、ホテリングの空間競争理論というもの。
“競合と利益のバランス”を人間は無意識に計算していて、結果的に「似たような場所、似たような内容、似たような価格」に集まっていく。
この理論は1929年にハロルド・ホテリング(Harold Hotelling)が提唱したものです。
ウェルネス業界も例外ではありません。
駅近の一等地に同じようなコンセプトのサロンが並ぶ
流行りのキーワードを全員が打ち出す
Instagramのフィードが、どこかで見たような言葉で埋め尽くされる
これを“偶然”と呼ぶのは、ちょっと違う気がします。
先日も本気で自分のスタジオのサイトか? と思って途中までスクロールしたページに出会いました。あまりの露骨さにこちらが恥ずかしくなりました。

それでも、「あなたにしか出せない味」がある
でも、私はこうも思います。
ビーチの中央で肩を並べたアイスクリーム屋さんが、
「同じ味」を売っていたわけではないはず、と。
たとえ場所が似ていても、たとえ価格が同じでも、
伝え方、届け方、関わり方には、その人なりの「個性」と「物語」がある。
大事なのは、競争を避けることではなく、自分の味を曖昧にしないこと。
そういう視点もあるからだろうか、近隣の競合調査?というのをあまり躍起になってしたことがない。どちらかといえば個性を磨くことには興味があった気がします。恥ずかしながら、いつも「知ってました…?」って教えてもらって知る始末…。
---
あなたのスタジオだけにしかないものは、何ですか?
ピラティスやウェルネスの分野でビジネスをしていると、つい他人の動きが気になります。
「この地域はもう飽和してる」「価格競争に巻き込まれそう」— そう考える前に、問いかけてみてください。
あなたの言葉は、誰の心に届いていますか?
あなたが生み出している時間や空間は、他と何が違うか?
あなたのストーリーは、サービスにどう宿っているか?
ビーチの真ん中で戦うのではなく、
“自分だけの場所”をつくる感覚が、今こそ必要かもしれません。

最後に…
競合が増えることは、怖いことではありません。
むしろ、それだけニーズがある証です。
そして、選ばれる理由を言葉にできる人こそが、ビジネスを続けられる人です。
あなたの味は、きっと誰かの「お気に入り」になる。
個性、内容や理念の欠落した一時の活況に湧く一部によって業界の衰退や低下を危惧する気持ちもないわけではありません。
だからこそ、自分の旗印を立てて、その個性のもとに立ち続けることが大切です。
競争の中で埋もれるか、輝くか。
その分かれ道は、意外にも「個性を恐れないこと」なのかもしれません。
コメント